血友病患者会での活動経験から伝えたいこと(福岡県 仮名 福田正和さん)

私は血友病と付き合って40年目を迎えています。
幼いころから血友病患者会に参加しており、患者会では楽しかった思い出や同じ病気を持つ同年代の友達、ご家族の方が相談に乗ってくれて安心した経験をたくさんしました。今は少しでも同じ病気を持つ人たちの力になりたくて、患者会の活動に携わっています。

小学校4年生のころに血友病患者であることを自覚

私が自分の病気を自覚したのは小学校4年生のころでした。
物心つく前から通院しており、両親は病気について色々と説明をしてくれていたのかもしれませんが何も覚えていません。幼少期から血友病患者会に参加していたこともあり、ごく自然に自分の病気と向き合っていたのだと思います。自覚した後も、友達に自分の病気について伝えることはしませんでした。
その後、中学生になって病院の教育プログラムに参加し、血友病治療薬の自己注射を行うようになりました。私同様、多くの血友病患児は小学校高学年から中学生になって初めて周囲の大人が言っていたことを理解できるのだと思います。

血友病患者会の活動

血友病であることを自覚した後も、病気について詳しく調べるようなことはありませんでした。病気についての知識や情報は患者会が毎年開催していたサマーキャンプや総会で得ることができたからです。
サマーキャンプは年に1回、夏休みに一泊二日か二泊三日で開催されていました。患者と家族、医師や看護師さんが総勢で100人ほど参加します。何かトラブルが起きたとしても、すぐに診てもらえる状況でしたので、このときだけは、病気のことを気にすることなく思いっきり遊べました。夜になると、青年患者部会や保護者部会といったグループ単位で集まり、さまざまな情報交換を行っていました。
総会が開かれるのは毎年3月で、専門医を講師とした勉強会が行われていました。新しい治療法や薬などについても勉強しました。その中で、「こういうことは危ない」という知識がつき、普段の学校生活で友達に誘われても「それは止めておくよ」と断ることができるようになりました。

血友病患者だからこそ共有できること

私の場合は患者会活動をずっと続けていますが、進学や就職などのタイミングで参加しなくなる方も少なくありません。患者会の集まりは土日に設定されることが多く、社会に出ると都合がつかないことも増えます。同じ場所に集わなくてもSNSを通じてコミュニケーションがいくらでも図れるからだと思います。また、同年代の知人が減ってくることも不参加の理由となっています。
一方で、新しく参加する方もいます。他の患者や家族がどのように病気に向き合っているのか、ハイハイしはじめた赤ちゃんの部屋をどのように整えればいいのか、幼稚園に入れるとき、小学校に上がるとき、中学校に上がるときに学校側にどのように伝えればいいのか、わからないことだらけです。これらの疑問に的確に答えられるのが患者会だと思います。
私自身、病院を除けば、患者会に参加して初めて同じ病気の子供に会うことができました。学校の友達では話が通じないこともありますが、患者会で知り合った同年代の子供とは「こんなことあるよね」、「こういうときにどうした」、「あ、それ、僕もやった」という会話がはずみ、普段とは違って素の自分が出せたという開放感のようなものを記憶しています。

患者会を通じて子供のころに受けた恩

小さなころから参加していたサマーキャンプでは、大人や年上の子からとてもよく面倒をみてもらいました。自分も大きくなったら、同じように小さな子供を支えてあげようという気持ちが湧いてきました。
今も、患者会活動を通じて相談に乗ってあげたい、不安を解消してあげたいと考えています。また、自分の今の姿を子供たちにみてもらい、血友病であっても普通に生活していけるということを実感し、将来に希望も持ってもらいたいと考えています。
新型コロナウイルス感染症が流行して以来、サマーキャンプなどの開催が難しい状況が続いています。収束をみた暁には、盛大に執り行いたいと考えています。

さいごに

血友病自体はマイナーな病気で、専門的な知識を持つ医師も限られています。適切な診療を受けることは簡単ではありません。
患者会では専門医のお話を聴く機会があります。そして、豊富な経験を持つ保護者や患者本人からさまざまな情報を得ることもできます。本当は試しに参加するだけでもいいと思うのですが、患者会は少しハードルが高いということであれば、インターネットを通じて必要な情報を容易に手に入れることもできます。医療機関については血友病専門の診療科のある病院を検索し、最寄りの病院を見つけたら、かかりつけの先生に相談して紹介状を書いていただき、それを持って受診することをお勧めします。専門の医療機関が遠方にしかなく通院が難しい場合でも、年に1回は専門施設を受診して指導を受け、薬は地元の医療機関で処方してもらうことが大切だと思います。