出血症状
血友病の出血症状は出血時に血が止まりにくくなることで、血の止まりにくさは出血の部位や程度によりさまざまです。主な出血の原因と症状は以下のとおりです。
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頭蓋内出血
原因頭を打ったり、けがをした場合に起こりやすくなります。ただし、原因不明または明らかではないことが半数以上あります。
症状吐き気や頭痛、眠気が起こります。また小さな子供では発熱や機嫌が悪くなったり、元気がなくなったりすることなどがあります。
重い後遺症が残る場合や命に関わる場合もあるため、迅速な対応が必要です。 -
鼻出血
原因鼻を打ったり、鼻をほじった場合に起こります。
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口腔内・歯茎の出血
原因噛み傷や歯が抜けた時に起こります。
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消化管出血
原因胃・十二指腸潰瘍や胃炎、腸炎などで粘膜が傷ついていたり、大腸内に炎症ができたりする場合が多いです。
症状吐物に血が混じったり、便に血が混じる(タール便)ことがあります。
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関節内出血
原因関節を打ったり、激しい運動をした場合に起こりやすくなります。
症状出血が起きた直後は、動きがいつもと違ったり、むずむずするなど関節に違和感があらわれることがあります。また、出血した関節では、痛みや腫れ、熱感、関節の動かしづらさがあらわれる場合があります。
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皮下出血
原因体を軽く打ったり、けがをしたりした場合に起こります。特に原因がなくても出血することがあります。
症状紫のアザがあらわれ、さらにしこりのようなものができる場合があります。
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筋肉内出血(腸腰筋出血など)
原因体を打ち付けたり、激しい運動、無理に重たい物を持ったりした場合に起こりやすくなります。
症状痛みや腫れのほかに筋肉がこわばることがあります。
特に腸骨筋や腰筋で出血する腸腰筋出血では激しい痛みで、股関節を伸ばすことができなくなることがあります。 -
血尿
原因腎臓の尿細管または糸球体の出血が多いです。原因が分からないことが多いですが、腰部分の打撲や結石によって起こる場合もあります。
症状腹痛、腰痛のほか、尿が赤くなること(血尿)があります。
出血症状の好発年齢
年齢によって、活動量や活動内容が異なるため起こりやすい出血症状が異なります。
主な出血と好発年齢
新生児期~乳児期
乳児期までは運動量が少ないため、出血の頻度はあまり高くありません。しかし、活動するようになると、些細なことで体を打っても、皮下出血が起こりやすくなります。その他にも、頭蓋内出血もみられることがあります。
幼児期
幼児期になりハイハイやつかまり立ちをするようになると、皮下出血だけでなく、関節内出血も起こりやすくなります。
また、乳歯の生えかわりに伴い、歯肉出血や鼻出血も起こりやすくなります。
学童期以降
学童期では腸腰筋出血などの筋肉内出血が起こりやすくなります。
腸腰筋出血はスポーツや激しい運動により起こることが多いです。
また、尿が赤くなる血尿や、消化管出血がみられることもあります。
関節内出血と筋肉内出血の主な部位と進行した症状
血友病の治療を要する出血症状は、特に関節内出血が多く、次いで筋肉内出血が多くなります。これらの主な部位と進行した時の症状は以下のとおりです。
関節内出血
主な部位
肘や膝、足首などの関節でよくみられます。
進行した症状
出血を繰り返すことが多く、出血を半年に3回以上繰り返している関節は標的関節と呼ばれます。標的関節になると特に明らかな原因がなくても出血を起こしやすくなります*。このような関節は、血友病性関節症になりやすいことが知られています。
筋肉内出血
主な部位
上腕二頭筋や前腕、太もも、ふくらはぎ、腰、腸骨の筋肉でよくみられます。
進行した症状
出血部位に血腫ができることがあります。血腫が周囲の神経や血管を圧迫して、激しい痛みやしびれ、関節が動かしにくくなる場合があります。
血友病性関節症について
症状
関節の動かす範囲が狭くなったり、動かしにくくなったり、動かす時に痛みが出たりします。
主な部位
関節内出血を起こしやすい部位で起こりやすく、特に肘、膝、足首などの関節でよくみられます。
関節内出血から血友病性関節症になるまで
関節で出血が繰り返されると、本来骨をなめらかに動かす役割を担う滑膜が炎症を起こし、増殖、肥厚が起きます。この滑膜の炎症が慢性的に続くと、関節の変形などが起こり、血友病性関節症になります。
関節の検査
関節の状態を調べる検査に機能評価と画像評価があります。機能評価では関節の動きや関節が動く範囲を評価します。画像評価はレントゲン検査やMRI検査、超音波(エコー)検査などを用いて評価します。
これらの検査を行うことで、血友病性関節症かどうかを判断します。